◆ ライナーノーツ ◆

脚本・演出の斜あゐりによる、本公演のライナーノーツです。



ブライアン・エプスタインの物語を描きたかったんです。
彼が命を賭してこの世に送り出してくれた、ビートルズという才能。
誰にも否定できない、ビートルズの輝かしい業績。
それは、彼らの母とも言えるエプスタインが、文字通り支え尽くしたからこそなんだと。

事の起こりは、企画段階で「ビートルズで一本やろう」って話が出たこと。
そこでちょうど、他人からの発案でモノを書いてみたいなと思ってた私は
よしきた任せろ!と資料集めを始めたわけです。

ところが、そもそも全然ビートルズを好きになれなかった
ブログで修平さんが書いてくれてたのとまったく同じ。「キレイで眠たい音楽」。

ビートルズの人としての魅力もね、調べれば調べるほどビミョーで。
本当なんでこの企画請け負っちゃったんだろうって悩んじゃった。
ほんとぶつかってばっかり潰しあってばっかりで、才能はあっても協調性はないし、
こんな内情ぐちゃぐちゃどろどろしたバンドの音楽聴いてて
よくもまああのファンの連中はキャーキャー失神してられるな、アタマお花畑か!
って思ってました(ファンの方々、ごめんなさい)

そんなわけで、私はすっかりビートルズを「手のかかる連中」認定。
彼らのマネジメントを一手に担った苦労性のマネージャーに
どんどん惹かれていきました。
しかも最期は非業の死。

ずっとずっとずっとビートルズを愛して、
その愛ゆえに死んだのかもしれないエプスタイン。
どうしてもその死を、私は正義にしたかった。
たとえどんな存在であれ「ビートルズのマネージャー」として死んだ
だから、悔いは無い。
その姿を見せたいと思いました。

描くべきはこれだ!!とテンションもUP↑☆
だけど今度は、エプスタインを描くにはちょっと資料が足りなすぎた。
この時点で、歴史絵巻のような史実に基づいた物語にすることはやめました。
完全にフィクションに振ったほうが、エプスタインを描ききれるかなと…
まあ、結果、あのようなぶっとんだ物語に。ドジャーン。ちょっとぶっとびすぎた。
もうしませんごめんなさい。
でも、エプスタインとポールとほか三人の偽メンバー、
それぞれにしっかり物語を持たせられて、そしてそれを皆が形にしてくれて
私はとってもやりがいがありました。
楽しんでいただけていたら幸いです。

最後に、なぜ、ビートルズの中でポールだけがホンモノだったのか。

舞台上でもポールの口から語らせましたが、
エプスタインの死後、より一層ぐちゃぐちゃに、分裂し放題になったバンドを
最後まで「ビートルズ」としてまとめ続けようとした
(それが善か悪かはそれこそ判断なんてできないのだけれど)
ポールのそんな一本気なところに私が惚れたからです。

ひとりぼっちで、ひとりぼっちと知りながら、旗を振り続けることは苦しくてつらい。
それでもポールはギリギリまで粘った、仁義ある漢だ!と、そういうことです。
作中で彼を支えた偽の三人も、ホンモノの影をちょっとずつ背負わせて描きました。
斜あゐりのビートルズが描けて楽しかったです。

ありがとうございました。

2013.12 斜あゐり


◆ CAST ◆


ポール 江村 修平
(ルート)
ジョージ 大山 航
リンゴ 慶雲
ジョン えりちょん
エプスタイン 小松なっぱ



◆ STAFF ◆


脚本・演出 斜あゐり
舞台監督 慶雲
舞台監督補佐 月島 歩
(兎桃企画)
照明 七色からす
音響 Nowhere Man
制作 ヨシキリ・チャトランガ
小松なっぱ
青星 大
フライヤーデザイン FAT GRAFIX
キャヴァーン・クラブ Maggie
酔月夢心
◆ SPECIAL THANKS ◆
(敬称略)
写真撮影
寺西祥
受付補助
しゃらまる
照明アドバイザー
高口綾